福島県の中部、奥羽山脈と阿武隈高地にはさまれた内陸地域は「中通り」といわれ、県庁所在地の福島市や経済・交通の中心である郡山市もここにある。10年前の2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原発事故で、「中通り」は大量に降り注いだ放射性物質で汚染されたが、住民は強制避難の対象にはならなかった。
原発事故当時、郡山市に暮らしていた主婦・森松明希子さん(47)は、3歳の長男と0歳の長女の健康への影響を考え、夫を郡山市に残して、その年の5月に大阪市に避難した。いわゆる“自主避難”だ。「被災地では放射能についての情報を十分に得られず、大阪に避難して初めて分かったことも多かった」と語る。それから10年、森松さん母子は大阪で暮らし、夫が月に一回ほど郡山市から来訪する生活が続いている。
福島市に暮らしていた大学准教授・荒木田岳さん(51)もまた、震災翌日に原発の異変を察知して、妻と6歳の長男、3歳の長女とともに、新潟市に“自主避難”した。「福島市内でも、1時間あたり放射線量が何十マイクロシーベルトのところがあったが、国は測らない、知らせない、助けないという姿勢を通した」と憤る。職場は福島市にあるため、10年経った今も、通勤に往復およそ5時間をかけて、福島と新潟を行き来する生活を続けている。
「中通り」に住んでいる人たちは、「避難しなかった人」「避難したくてもできなかった人」「避難後に戻ってきた人」「避難してきた人」「避難と帰還の二重生活の人」「新たに入ってきた人」に大別される。その枠外に、森松さんや荒木田さんのような「避難した人」の存在がある。森松さんや荒木田さんは“自主避難”を続けながら、国と東京電力を相手に、避難や被ばくを強いられたことによる損害賠償を求める裁判の原告になっている。
しかし国は、原発事故の翌年以降の損害を認めることは「居住を継続した住民の存在する事実に照らして不当」とする一方、「健康被害が懸念されるレベルではないにもかかわらず、この地域に居住する住民の心情を害し、我が国の国土に対する不当な評価になる」として、被災者の分断を図り、事故による被害を小さく見せようとしている。裁判での意見陳述で、森松さんは「避難した人の正当性だけを訴えているのではなく、福島に留まった人も含め、誰もが人として健康に生きることの大切さを知ってほしい」と訴えた。
10年前に国が発令した「原子力緊急事態宣言」は未だ解除されず、県内外への避難者は今もおよそ3万人いる。番組では“自主避難”している二組の家族の他に、「中通り」に留まった人たちにも取材し、原発事故からの真の「復興」について考える。
ナレーション:斉藤とも子
原発事故当時、郡山市に暮らしていた主婦・森松明希子さん(47)は、3歳の長男と0歳の長女の健康への影響を考え、夫を郡山市に残して、その年の5月に大阪市に避難した。いわゆる“自主避難”だ。「被災地では放射能についての情報を十分に得られず、大阪に避難して初めて分かったことも多かった」と語る。それから10年、森松さん母子は大阪で暮らし、夫が月に一回ほど郡山市から来訪する生活が続いている。
福島市に暮らしていた大学准教授・荒木田岳さん(51)もまた、震災翌日に原発の異変を察知して、妻と6歳の長男、3歳の長女とともに、新潟市に“自主避難”した。「福島市内でも、1時間あたり放射線量が何十マイクロシーベルトのところがあったが、国は測らない、知らせない、助けないという姿勢を通した」と憤る。職場は福島市にあるため、10年経った今も、通勤に往復およそ5時間をかけて、福島と新潟を行き来する生活を続けている。
「中通り」に住んでいる人たちは、「避難しなかった人」「避難したくてもできなかった人」「避難後に戻ってきた人」「避難してきた人」「避難と帰還の二重生活の人」「新たに入ってきた人」に大別される。その枠外に、森松さんや荒木田さんのような「避難した人」の存在がある。森松さんや荒木田さんは“自主避難”を続けながら、国と東京電力を相手に、避難や被ばくを強いられたことによる損害賠償を求める裁判の原告になっている。
しかし国は、原発事故の翌年以降の損害を認めることは「居住を継続した住民の存在する事実に照らして不当」とする一方、「健康被害が懸念されるレベルではないにもかかわらず、この地域に居住する住民の心情を害し、我が国の国土に対する不当な評価になる」として、被災者の分断を図り、事故による被害を小さく見せようとしている。裁判での意見陳述で、森松さんは「避難した人の正当性だけを訴えているのではなく、福島に留まった人も含め、誰もが人として健康に生きることの大切さを知ってほしい」と訴えた。
10年前に国が発令した「原子力緊急事態宣言」は未だ解除されず、県内外への避難者は今もおよそ3万人いる。番組では“自主避難”している二組の家族の他に、「中通り」に留まった人たちにも取材し、原発事故からの真の「復興」について考える。
ナレーション:斉藤とも子
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